研究概要 |
Neurosinは脳内に広く発現するセリンプロテアーゼで,アルツハイマー病(AD)の老人斑,パーキンソン病(PD)のレビー小体に局在する.α-シヌクレインはADで認められる老人斑と,PDやレビー小体型痴呆(DLB)で認められるレビー小体の構成蛋白である.申請者らは野生型,A53T変異型のαシヌクレインを大腸菌ベクターへ挿入し,大腸菌で蛋白を発現させ,リコンビナントαシヌクレインを精製した.またNeurosinをCOS細胞で発現させ,液体クロマトグラフィーで分離精製した.Neurosinのαシヌクレイン分解活性を現在検討している. また脳脊髄液中のNeurosinを定量する高感度sandwich ELISA法を用いて,昨年収集したAD59例,PDまたはDLB22例,対照とする末梢神経障害95例においてNeurosinを定量した.髄液中Neurosinは不活性型として存在し,対照群では平均値男性,女性それぞれ37歳以下で325.5,407.0ng/ml,38-56歳で478.2,464.6ng/ml,57-67歳で499.2,554.9ng/ml,68歳以上で501.6,452.5ng/mlと高齢になるに従い男女共に有意に上昇した.この結果はNeurosinが加齢によりその分泌量が変化し,老化の生物学的マーカーとなる可能性を示唆した.ADおよびPDではNeurosinはそれぞれ487.6,488.2ng/mlであり,同年代の対照群と比較して有意な差は認めず,髄液中の不活性型Neurosinは必ずしも変性疾患の病理学的過程とは関連していなかった.
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