FALS SOD1変異導入のためのtransgeneを脊髄運動ニューロンのモデル細胞であるNSC34細胞に安定導入した。この細胞にCre recombinaseをadenovirus vectorにより一過性に発現させ、変異SOD1の発現を誘導した。変異SOD1を誘導した細胞は予想に反し、lacZを感染させた細胞、すなわち野生型SOD1を発現している細胞と比較して顕著な細胞死は観察されなかった。 この過程でtransgeneのstufferに挿入した野生型SOD1の発現量が、誘導される変異SOD1の発現量と比較して格段に低いことが明らかとなった。これは野生型SOD1 cDNAの上流に挿入したIRESの影響と予想されたため、transgene中のpromoter-loxP-neo-IRES-WT-SOD1-ECFP-loxP-という配列をpromoter-loxP-WT-SOD1-ECFP-IRES-neo-loxP-に変更した。この新しいtransgeneはNSC34細胞を用いた一過性発現の系で野生型SOD1と変異SOD1の発現量が同程度であることが確認された。よってES細胞の系はこのtransgeneを用いることとした。現在、このtransgeneを導入したES細胞株を樹立中である。 また、ES細胞を運動ニューロンに高効率に分化誘導するために必要なSonic hedgehogを産生するCHO細胞を樹立した。実際にこの細胞を私たちが確立した神経分化誘導法に組み合わせると、ES細胞由来の神経前駆細胞において、運動ニューロンの前駆細胞のマーカーである01ig2の発現の上昇が認められた。
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