研究課題/領域番号 |
16590847
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田中 耕太郎 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (90129528)
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研究分担者 |
野川 茂 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (50208310)
鈴木 重明 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276242)
傳法 倫久 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50306700)
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キーワード | 脳梗塞 / オリゴデンドロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 髄鞘 / 脱髄 / 再髄鞘化 / 脳組織再生 |
研究概要 |
オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の動態を、成熟オリゴデンドロサイト(OLG)や再髄鞘化の関係と共に、免疫組織学的にラット中大脳動脈閉塞・再灌流モデルで検討した。すなわち、成熟Sprague-Dawleyラット(12-14週齢)を用い、sham手術群(n=7)および脳虚血-再灌流群として実験的脳梗塞を一側中大脳動脈閉塞を栓子法(suture method)により作成、90分間閉塞後に再開通して、24時間後(n=7)、48時間後(n=7)、1週間後(n=7)、2週間後(n=7)、3週間後(n=7)、4週間後(n=7)生体灌流し脳を固定した。脳を固定後、凍結しクリオスタットで連続脳切片を作成した。オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーとして、抗A2B5抗体、抗04抗体、抗NG2 chondroitin sulfate proteoglycan抗体を用いた。また、ミエリン形成前の幼弱オリゴデンドロサイトのマーカーとして抗01抗体を、成熟オリゴデンドロサイトのマーカーとしてはNB3C4抗体、抗CNPase抗体、抗MBP抗体や抗MAG抗体を使用した。 OPCは再灌流1週間以降、特に2週間後、梗塞巣周囲のCREBリン酸化が持続的に亢進している領域で、著明な細胞体と突起の肥大やNG2発現量増加を示し、細胞数も有意に増加していた。OPCは細胞分裂像のみならず単極細胞ないし双極細胞の幼弱形態を示すものもあった。同部位では、再灌流48時間の時点で有意に減少していた成熟OLG数は2週間後、正常レベルに回復していた。同様に、48時間の時点では髄鞘の淡明化や有髄線維の不鮮明化が認められていたが、2週間後かなり回復していた。このOPC活性化は同細胞核におけるCREBリン酸化を伴っていた。これらの変化は大脳皮質のみならず脳梁でも認められ、灰白質および白質の梗塞巣周囲で普遍的に生ずる現象であった。一方、本虚血モデルで梗塞巣周囲に位置する脳室下層でのOPCの反応は、他の梗塞巣周囲領域と有意な差はなく、上記OPC細胞数増加は、主として各々の脳実質局所に存在するOPC活性化によるものと考えられた。 以上の結果より、OPCは、脳梗塞巣周囲の成熟OLG傷害部位で活性化され増殖・分化し、再髄鞘化など組織修復に関与している可能性が示唆された。
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