研究課題/領域番号 |
16590854
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
|
研究分担者 |
三井 良之 近畿大学, 医学部, 助教授 (40268389)
|
キーワード | 免疫性神経疾患 / ガングリオシド / リン脂質 / シアル酸 / 自己免疫 / Guillain-Barre症候群 / Fisher症候群 / 糖脂質 |
研究概要 |
Guillain-Barre症候群(GBS)などの免疫性神経疾患では抗ガングリオシド抗体がしばしば上昇する。本研究では、単独のガングリオシドではなく、ガングリオシドとリン脂質の混合抗原あるいは複数のガングリオシドからなる複合抗原に対する血中抗体の抗体価をELISA法で検討した。その結果、GBSにみられる抗GM1 IgG抗体や抗GalNAc-GD1a IgG抗体の抗体活性は単独のガングリオシドを抗原とするよりもphosphatidic acid(PA)などの酸性リン脂質を加えた場合の方が高まることが明らかになった。一方GBSの亜型であるFisher症候群にみられる抗GQ1b IgG抗体ではこのような抗体価の増強効果はみられなかった。さらにGBSにみられる抗GD1b IgG抗体について調べると、GD1bをmonospecificに認識する抗体には増強効果はなく、Gal-GalNAc基に反応してGM1やGA1にも反応する抗体では増強効果がみられることがわかった。以上より、抗GQ1b抗体やmonospecifficにGD1bに反応する抗体のように陰性電荷を強くもつジシアロシル基が反応に関与する抗体では増強効果がなく、ジシアロシル基の関与しない抗GM1抗体などでは増強されることが示唆された。抗ガングリオシド抗体の診断検査としての利用や病態への関与を検討する時にリン脂質の影響を考える必要がある。一方単独のガングリオシドには反応しないか弱い反応しか示さないが、二種類のガングリオシドを混合して抗原とすると強い反応を示すGBS血清の存在も明らかになった。そのなかでもGD1aとGD1bの複合抗原を認識するIgG抗体は、人工呼吸器を使用するなど重症のGBSと有意に相関することがわかった。重症化のマーカーとして強力な治療法を考える上で有用な指標となる可能性があり、さらに重症化のメカニズム解明の手がかりとなると考えられる。一方これまでのところ多発性硬化症などではこのような複合抗原に対する抗体はみられていない。
|