研究概要 |
1.日本人若年発症糖尿病患者に対するFoxa-2遺伝子変異スクリーニング<研究分担者:檜尾好徳(遺伝子変異解析)、鈴木進(対象患者資料の構成と臨床解析)> 相互に非近親な1型および2型の日本人若年発症糖尿病患者および日本人非糖尿病対照から,試料提供者やその血縁者の人権と利益を保護することを確認する十分なインフォームドコンセントのもとに血液を採取,DNAを抽出し,Foxa-2遺伝子をSNPsも含め全エクソン、プロモーター領域およびイントロン領域で直接塩基配列決定法により行った. 2.Foxa-2遺伝子変異解析<研究分担者:檜尾好徳(遺伝子変異解析)、鈴木進(対象患者資料の構成と臨床解析)> Foxa-2遺伝子に関しては、4種の既知の多型のうち、promoter領域nt537(A to G)多型とコドン279(A to G)多型において、若年発症群でのAアリルが正常対照群より優位であった(P<0.05).また同遺伝子エクソン1に2種の新しい塩基変異(nt645、nt666)を認めた. 3.HO-1遺伝子変異解析<研究分担者:檜尾好徳(遺伝子変異解析)> 糖尿病患者96例(D群)および正常対照102例(N群)より抽出したゲノムDNAを用いてHO-1遺伝子変異を検索、同定された多型と臨床データに関して解析を行った.HO-1遺伝子プロモーター部位に3種の多型、すなわちSNPHO1(A/T)、SNPHO2(A/G)、および(GT)nリピート多型を同定した.2個のSNPのアリル頻度は、SNPHO1(D群:A0.47、T 0.53、N群:A 0.48、T 0.52)、SNPHO2(D群:A 0.44、G 0.56、N群:C 0.47、T 0.。53)で、D、N両群間で有意差は認めなかった.(GT)nリピートは、D、N両群ともに2峰性を示し、n値よりS群、L群と分類した.N群で高脂血症合併例はS群と比較してL群において有意に高値を示した(カイ2乗p値<0.05).D群で収縮期および拡張期血圧は、S群と比較してL群では有意に高値であった(p<0.05).SNPHO1に関しては、N群においてAアリルをホモに持つ群がTアレルを有する群に対し高脂血症合併例が有意に増加していた(x2乗p<0.05).また、D群でAアレルをホモに持つ群がTアレルを有する群に対し収縮期血圧,拡張期血圧が有意に高値を示した(収縮期143±13mmHg(AA群)、124±14mmHg(AT群)、拡張期83±8mmHg(AA群)、74±9mmHg(TT群))(p<0.05). 本研究結果から、家族歴を有する若年発症糖尿病患者において、Foxa-2遺伝子多型が病像の多様性に関わる可能性が示唆された.また本遺伝子の複数の多型、すなわちSNPHO1および(GT)nリピートは糖尿病患者における血圧調節と関連する可能性が示唆された.
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