近年、私達は酵母ツーハイブリッド法を用いてPPARγのDNA結合ドメインに結合する新たなヒト転写活性型共役因子PPARγ-DNA-binding domain interacting protein1(hPDIP1)のクローニングに成功し、報告した。本年度研究では、PDIP1の更なる生理機能解析を行うため、マウス(m)PDIP1 cDNAのクローニングを試みた。hPDIP1 cDNAよりPCRプラマーをデザインし、RT-PCR法を用いて3T3-L1脂肪細胞よりmPDIP1全長cDNAを増幅し、得られたPCR産物の全塩基配列解析を行った。その結果、mPDIP1は2947アミノ酸よりなり、hPDIP1に比べ、アミノ末端領域においてalternative splicingによるアミノ酸配列の相違を認めた。ノーザンブロット解析では、ヒトに比較して、mPDIP1はより限局した臓器発現を示し、胎児期において特徴的なmRNA発現パターンの変化を認めた。脂肪細胞分化に必須の役割を示すことが報告されているCBPやTRAP220 mRNAとの発現比較を行ったところ、mPDIP mRNAはこれら転写共役因子と同様の発現を3T3-L1細胞分化過程を通して示すことが判明した。培養細胞を用いた遺伝子導入実験では、hPDIP1同様に、mPDIP1のcotransfectionにより容量依存性にPPARγのリガンド依存性転写活性化増強作用を認めた。興味ある事に、mPDIP1はPPARγのみならず、PPARαやPPARδの転写活性化も容量依存性に増強した。hPDIP1のN末端とC末端に対する抗ペプチド抗体を家兎において作製し、その特異性をin vitroで作製した蛋白を用いたwestern blot法や免疫組織染色にて検討した結果、C末端に対する抗体がPDIp1蛋白を認識することが判明した。
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