ヒトならびにマウスPPARγ-DNA-binding domain-interacting protein1(PDIP1)がPPARfamilyの転写活性型共役因子としてin vitroで機能することが平成16年度の研究から判明し、本年度は培養細胞を用いて更にその構造ならびに機能解析を進めた。その結果、ヒトPDIP1にはアミノ末端のalternative splicingによりPDIP1αとβとい2つのisoformが存在し、RNase protectionassayにて、ヒト培養細胞系ではPDIP1βがαに比較してドミナントに発現していることを確認した。HeLa細胞を用いた5'rapid amplification of cDNA end法にてPDIP1 cDNAの5'非翻訳領域の塩基配列を解析した結果、ヒトPDIP1 cDNAは20個のエクソンによってコードされていることが判明した。また、両isoformともにPPARγ、PPARαおよびPPARβ/δのリガンド依存性転写活性化を同様に増強したが、PDIP1αと異なりPDIP1βはandrogen receptorやestrogen receptorの転写活性化を増強しなかった。Small interfering RNAを用いて内因性PDIP1をノックダウンするとPPARγによる転写活性化が有意に減弱したことより、PDIP1はPPARγによる転写活性化に重要な役割を果たす事が確認された。PDIP1 mRNAは3T3-L1脂肪細胞やTHP-1マクロファージ細胞に発現しており、分化の課程を通じてその発現に大きな変化を認めなかったが、このPDIP1発現パタ一ンは脂肪細胞分化に必須の共役因子であるCREB-binding protein(CBP)やThyroidreceptor associating protein 220とほぼ同様であった。種々の欠失変異PDIP1を作製し、mammalian one-hybrid assayを用いて内因性の転写活性化ドメインの有無を検討したが、強力な転写活性化ドメインはなく、転写増強作用にはPDIP1の全長が必須であった。また、PDIP1は培養細胞系において、AF2ドメインに結合するCBPやsteroid receptor coactivator1といったヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するcoactivatorと相乗的にPPARγの転写活性化を増強した。
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