本年度の研究では転写因子C/EBPの核内発現増加にともなうmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の発現亢進を制御する目的で、転写因子C/EBPの抑制因子の解明を試みた。その結果 1)Nitric Oxide (NO)が血管平滑筋細胞におけるMCP-1遺伝子の発現を転写レベルで抑制すること、また、その抑制は転写因子C/EBPの活性を抑制する結果であることを明らかにした。さらに、NOによるC/EBPの活性の抑制はNO供与体であるSodium Nitroprusside (SNP)0.05mMから1mMまで濃度依存性に認められた。しかしながら、SNP 0.5mM以上ではMCP-1遺伝子の発現を転写レベルで逆に増加させ、この増加作用はC/EBP活性を介さないものであった。 2)一方、SNPは血管平滑筋において0.05mMから1mMまで濃度依存性にCEBP-homologous protein (CHOP)の発現を誘導することを見い出した。CHOPはロイシンジッパー構造を介してC/EBPと2量体を形成して、C/EBPのDNA結合を阻害することからSNPによるCHOPの誘導がC/EBPの活性の抑制機構を説明しうると考えられた。事実、発現ベクターによるCHOPの平滑筋での過剰発現は発現量依存性にC/EBP活性を抑制した。興味あることに、CHOP高発現下では高濃度SNP同様、C/EBP活性非依存的にMCP-1遺伝子のプロモーター活性を増加させた。 3)さらにMCP-1のプロモーター解析およびゲルシフト解析から、このCHOPによるMCP-1遺伝子のプロモーター活性亢進作用はMCP-1遺伝子の上流域の-190から-179番塩基の間にCHOPが直接作用して亢進させる事を見出した。
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