研究課題
私共が見出した新規酸化LDL受容体であるLOX-1は、これまでに動脈硬化病変での強い発現が報告されること、LOX-1を介した酸化LDLの取り込みにより、平滑筋細胞のアポトーシスなどに関わることを報告し、動脈硬化プラークの破綻、不安定化に関わる分子であることが推察されている。また私共は、細胞表面に発現されたLOX-1の一部が何らかのプロテアーゼにより切断されて生じる可溶型LOX-1があることを発見し、さらにそのヒト血清中での特異的かつ高感度な測定法を開発し、可溶型LOX-1の血中濃度がプラーク破綻により発症すると考えられる急性冠症候群の急性期で著明に上昇することをこれまでに明らかにしている。本年度の研究では、可溶型LOX-1の切断の分子機構としてトロンビンと血栓形成の関与につき検討した。トロンビンはLOX-1強発現CHO細胞および培養血管内皮細胞にて可溶型LOX-1の産生を著明に増加させた。また可溶型LOX-1の産生はメタロプロテアーゼ阻害剤GM6001で著明に抑制されたことから、メタロプロテアーゼの活性化を介するものであると考えられた。塩化鉄を外膜に塗布して形成される動脈血栓モデルを、昨年度までに作成した血管内皮および平滑筋にてヒトLOX-1を強発現するトランスジェニックマウスにおいて作成したところ、ヒト可溶型LOX-1の血中濃度の著明な上昇がみられた。以上より、可溶型LOX-1の切断機構としてトロンビンと血栓形成の関与が培養細胞実験とトランジェニックマウスを用いたin vivoの実験の双方にて明らかとなった。また、SR-PSOXにも可溶型分子が存在し、CXCR6陽性のリンパ球に対するケモカインとして作用することが明らかにされているが、私共はマトリゲルを用いた培養細胞実験により、可溶型SR-PSOXが血管内皮細胞の増殖と管腔形成を促進することを明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Biochem.Biophys.Res.Commun 331
ページ: 1295-1300
Circulation 112
ページ: 812-818