研究概要 |
CD36欠損症は、申請施設にて発見された我が国に高頻度に認められる遺伝的疾患であり、申請者らは世界に先駆けて本症が、インスリン抵抗性、脂肪酸ダイナミズム異常に関連して高脂血症、耐糖能障害などメタボリック症候群の表現型を呈すること、またその表現型は、加齢、脂肪負荷など後天的要因によって大きく変化する可能性を示した(Lancet 2001,Diabetes Care.2003)。 そこで、本年度はCD36欠損状態をモデルに、メタボリック症候群発症の分子機構の詳細、特に高トリグリセリド血症、低HDL-コレステロール血症の機構を明らかにすることを目的とした。 CD36ノックアウトマウスに、オリーブ油を経口投与して、経時的に採血及び腸リンパ液を採取して、コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロールなどを測定した。CD36ノックアウトマウスでは、オリーブ油負荷によって腸リンパ液中へのカイロミクロン分泌が著明に増加していた。 さらに、CD36欠損症のメタボリック症候群の表現型の一つであるHDL-コレステロール低下のメカニズムを明らかにする目的で、小腸上皮細胞におけるATP-binding cassette transporter-A1の発現を検討したところCD36ノックアウトマウスでは、mRNA,タンパク量とも著明に低下していた。腸上皮細胞のモデルであるCaco2細胞においてCD36を過剰発現させたところABCA1蛋白の発現が増加した。 これらの結果は、CD36欠損状態における高TG血症、HDL-C低下のメカニズムであり、CD36欠損状態におけるメタボリック症候群発症の分子機構の1つと考えられた。
|