1.膵β細胞特異的PDK1遺伝子欠損マウス(KO群)と対照マウス(C群)の両遺伝子型のマウスはメンデルの法則に従って出生した。KO群の体重は8週齢よりC群に比し有意に低かった。膵ラ氏島におけるPDK1蛋白の発現量は、KO群ではC群に比し、20%以下に低下していたが、他の臓器においては両群間で差を認めず、膵β細胞特異的なCreリコンビナーゼの発現により膵β細胞でのみPDK1遺伝子の発現抑制が生じた。 2.膵β細胞面積は、生直後では膵β細胞特異的PDK1遺伝子欠損マウス(KO群)と対照群(C群)間で有意な差は認めなかったが、4週齢ではKO群で明らかな低下を示し、その後加齢とともにβ細胞面積の減少を認めた。 3.KO群では、β細胞面積の減少に伴い、インスリン値の低下、血糖値の上昇を認め、16週齢でほぼ全てのKO群で糖尿病を発症した。 4.膵組織のPCNA(proliferating cell nuclear antigen)染色ではKO群で膵β細胞増殖は有意に低下していた。Cleaved caspase-3陽性細胞はKO群で有意に増加しておりアポトーシスの亢進を示した。結果として、KO群でβ細胞数の減少を認めたが、加えて膵臓あたりの膵ラ氏島数および個々のβ細胞のサイズも有意に減少しており、β細胞量の著明な低下を示した。 5.膵の免疫組織染色においてKO群ではC群に比し、細胞周期関連分子p27kip1、p21cip1の発現が増加しており、逆にサイクリンD1、D2、D3およびpdx1の発現低下を認めた。また、KO群では、Akt、Foxo1、GSK3β、p70S6k、pS6、mTORのリン酸化の低下も認めた。
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