(1)p27Kip1ノックアウトマウス(p27Kip1KOマウス)は、体重あたりの脂肪組織重量には野生型マウスと変化はないが、個々の脂肪細胞の小型化と脂肪細胞数(総数)の増加を認め、良好なインスリン感受性を示す。このp27Kip1KOマウスに生活習慣の一つである高脂肪食を負荷すると、個々の脂肪細胞の小型化が消失し、野生型マウスの脂肪細胞と同じ大きさとなる。p27Kip1KOマウスでは脂肪細胞数(総数)が増加しているため、体重あたりの脂肪組織重量の急激な増加を認め、インスリン抵抗性を発症すると考えられた。 (2)p27Kip1の発現を蛋白レベルで抑制するユビキチンリガーゼSkp2のノックアウトマウス(Skp2KOマウス)では、著明な脂肪細胞数の減少と高脂肪食負荷時の肥満形成の抑制が認められた。Skp2KOマウスでの脂肪細胞数の減少がエネルギー過剰状態での生体の糖代謝悪化に抑制的に作用することを明らかとした。 (3)p27Kip1KOマウス及びSkp2KOマウスより得られた胎児線維芽細胞を用いた脂肪細胞への分化の検討により、p27Kip1は脂肪細胞分化に抑制的に働き、Skp2は脂肪細胞分化に促進的に働くことを明らかとした。 以上のことから、肥満治療における分子標的としての脂肪細胞増殖の意義が明らかとなった。また、 (4)肥満形成過程において、脂肪細胞増殖が活発に活性化されていることを明らかとした。さらには、この脂肪細胞増殖を細胞周期阻害剤で抑制することで、肥満の増悪抑制や糖代謝悪化に抑制的に働くことを明らかとし、細胞周期阻害剤の新たな抗肥満・抗糖尿病薬としての可能性を見出した。
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