現代化の位相の異なる日本、アメリカ、イタリア、タイ、中国での小児の生活習慣と生活習慣病リスクファクターの国際比較検討とそのインターベンションプログラム作成を本研究の目的とした。 平成16年度は既存のデータから各国の食生活と生活習慣病危険因子との関係を解析した。1日摂取脂肪量(g)や脂肪熱量比は40年間で5カ国とも増加するか最近頭打ちの状態であった。これらの年次推移はアメリカ、日本、イタリア、タイ、中国の順で5〜10年の位相をもって平行していた。また、生活習慣病危険因子である小児肥満はアメリカ、日本、タイ、中国の順にそれぞれ10〜5年の位相をもって増加のカーブが平行移動していた。それらより1日総脂肪摂取量、脂肪熱量比の増加とともに小児肥満が増加することが示唆された。 平成17〜18年度初頭までは、本邦小児の調査検査に加え、アメリカ、イタリア、タイの凍結検体の輸送(輸入)・測定、それらの国の食事調査、生活活動調査を実施した。中国は凍結検体の海外輸送が不可能であったため、比較対象から除外せざるを得なくなった。当初の予定より調査に多大なる時間を要してしまったことや、当初の研究代表者であった貴田嘉一教授の急なご逝去等のため本研究の進行がやや遅れた。ただし、暫時解析中で今後研究成果を発表する予定である。 今後本研究の目的を達成することを目標とし、その予備研究として本邦の調査のみを解析した。特にインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームの観点からアディポサイトカインとインスリン抵抗性の関連をベースに生活習慣病危険因子との関係を考察した。 アディポサイトカインの中でもレプチンやアディポネクチンは体脂肪率、BMI等の内臓脂肪(肥満)に関連する体格指数や血清脂質と関連した。レジスチンはそれらとは相関はなく、血圧や空腹時血糖と相関し、内臓脂肪とは独立して、インスリン抵抗性を介して空腹時血糖や収縮期血圧を上昇させることが示唆された。
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