研究概要 |
1.糖尿病における足細胞の極性制御:ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデルでの検討 8週齢のマウスにSTZ (125mg/kg BW)を2回連日腹腔内に投与して作製した糖尿病モデルマウスを用いて、解析を行った。STZ投与12週後には、血糖値、尿蛋白共に上昇しており、組織学的にも糸球体におけるPAS陽性部分の増加が認められた。これらの所見はAT1a-/-では軽微であった。現在、腎皮質のnephrin、CD2AP、Z0-1、PKCλ、PAR3、PAR6、ASIPの発現解析中(免疫組織化学およびWestern blot法)である。 2.他の糖尿病モデル動物における腎症の評価 糖尿病モデルとしてdb/dbマウスを用いて検討した。db/dbマウスは6ヶ月齢で著明なアルブミン尿、および糸球体病変を呈する。3ヶ月齢より6ヶ月齢までアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を長期投与したdb/dbマウスでは、db/dbマウスに比べて尿中アルブミン排泄量が少なく、糸球体病変も軽微であった。腎皮質におけるnephrin, WT-1, podocin,およびCD2AP遺伝子発現はコントロールマウスに比べてdb/dbマウスで増加しており、ARB投与群での発現はコントロールマウスと同様であった。極性制御因子であるPKCλ,PKCζ,ASIPの発現は不変であった。db/dbマウスではアンジオテンシノーゲン遺伝子発現も3倍程度に増加しており、db/dbマウスにおけるレニン-アンジオテンシン系の亢進の一因となっていると思われた。さらに、db/dbマウスの腎臓における酸化ストレス状態を、尿および組織を用いて検討した。db/dbマウスでは、尿中酸化ストレスマーカーが著明に増加しており、腎組織では糸球体に酸化ストレスマーカーの染色が認められた。これらの変化はARB投与で改善した。アンジオテンシンII刺激が、糖尿病性腎症における糸球体の酸化ストレスを増強し、尿蛋白を増加させている機序が考えられた(投稿準備中)。 3.PKCλ遺伝子改変動物を用いた検討 PKCλ遺伝子改変動物を用い、スリット膜蛋白の機能、特に尿蛋白の出現への影響を検討する。nephrinプロモーターを用いて、糸球体足細胞のみでPKCλを欠損したマウスを用い、共同で解析中である。
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