研究概要 |
1.広範囲のエンテロウイルス抗体を検出できる新測定系によるウイルス抗体価の検討 発症早期の劇症1型糖尿病患者19名と、年齢・性をマッチさせた発症早期自己免疫性1型糖尿病患者18名および健常コントロール19名において、エンテロウイルスIg-M,Ig-G,Ig-A抗体価を測定した。検討に用いた測定系は、特定のウイルスではなく、エコーウイルス、コクサッキーA群ウイルス、コクサッキーB群ウイルスなど広範囲のエンテロウイルスに反応する抗体を検出し得る測定系である。 劇症1型糖尿病患者では、自己免疫性1型糖尿病患者および健常コントロールに比し、Ig-A抗体価が有意に上昇していた。Ig-M抗体価はすべての患者において陰性であった。また、Ig-G抗体価は、劇症1型糖尿病患者および健常コントロールにおいて、自己免疫性1型糖尿病患者に比し、有意に高値であった。 腸管感染により特異性が高いエンテロウイルスIg-A抗体価が劇症1型糖尿病患者で、他の2群に比し有意に上昇していたことは、劇症1型糖尿病患者では繰り返しエンテロウイルスに感染していたこと、すなわち劇症1型糖尿病患者はエンテロウイルスに易感染性であることを示すと解釈できる。このような易感染性が劇症1型糖尿病の発症に関与していることが示唆された。 2.マイクロダイセクション法を用いたエンテロウイルスゲノムの発現の検討 現在、生検膵組織からエンテロウイルスゲノムを分離する作業を試みている。
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