1)ヒト乳癌MCF7細胞において、活性型ビタミンDのみならず、エストロゲン(17βE2)、アンドロゲン(DHT)、デキサメサゾン、甲状腺ホルモン(T3)、さらにプロゲステロンもまた、いずれも10nMの濃度で内因性のPTHrP遺伝子の発現を40〜60%抑制することをRT-PCR法で確認した。抑制のピークはいずれもホルモン投与後4〜6時間であった。2)これらのホルモン受容体は程度の差こそあるものの、いずれもMCF7細胞において発現されていた。3)この抑制はDNA-PK阻害薬として機能する高濃度ウォルトマニン(4μM)ですべて解除された。4)DNA-PKのサブユニットのKu抗原のアンチセンスDNAを導入してKu抗原の発現量を20%程度まで低下させることによっても、1)で見られた抑制はすべて解除された。5)PTHrP遺伝子が活性型ビタミンDによって発現抑制を受けるのに必要なDNA配列(nVDRE)を持つレポーター遺伝子の発現は、1)に述べた他のすべてのホルモンによっても1)と同様の時間経過で同程度に抑制された。nVDRE配列を持たないコントロールのレポーター遺伝子の発現は変化しなかった。6)クロマチン免疫沈降(ChlP)法を用いて、DNA-PKの酵素活性を有するサブユニット(DNA-PKcs)が上述のいずれのホルモンによっても、その投与15〜30分後以降、nVDREを含む領域に数時間にわたって恒常的に動員されることを見い出した。一方、これらのホルモン受容体はいずれも同領域にホルモンの存在にかかわりなく恒常的に動員されていた。 以上より、種々のステロイドホルモン/甲状腺ホルモン/ビタミンDによる遺伝子発現抑制機構の少なくとも一部に、DNA-PKとnVDRE配列を介する共通の分子機構が存在することがわかった。
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