研究課題
PPARαはステロイドホルモンレセプターファミリーに属し、フィブラート薬によって活性化される。血管内皮細胞の細胞質にはPPARαが発現しており、フェノフィブラートの処理によって細胞質から核内へ移行する。PPARαの活性化によってTNFαにより誘導されるVCAM-1発現は遺伝子の転写レベルで抑制された。PPARαの活性化は、TNFαにより活性化される転写因子NF-κBのVCAM-1遺伝子プロモーター領域への結合を阻害することが判明した。この結果は、PPARαがNF-κBの転写能を抑制することによりVCAM-1遺伝子の転写を抑制することを示すものである。MCC-555はわが国で開発されPPARα、γ、δの3つのサブタイプのPPARを活性化させるPPARトリプルアゴニストである。MCC-555は培養血管内皮細胞のVCAM-1発現を遺伝子のプロモーターレベルで抑制し、単球様細胞の血管内皮細胞への接着を阻害した。PPARδ特異的アゴニストであるGW501516もVCAM-1発現を抑制したが、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンは抑制しなかった。これらの結果より、血管内皮細胞のVCAM-1発現抑制作用はPPARのサブタイプのうち、α、δにより認められることが明らかとなった。血管内皮に発現する血管内皮由来NO合成酵素(eNOS)は抗炎症的・抗動脈硬化的に作用する分子のひとつである。PPARαの活性化によりeNOS蛋白およびeNOS mRNAの発現量が増加することが判明した。PPARαはeNOS遺伝子のプロモーター活性は促進しなかったが、eNOS mRNAを安定化させることが明らかとなった。PPARαがeNOS mRNAを安定化させる分子メカニズムは不明であるが、核内受容体によるmRNA安定化作用を解明するために、興味深い現象と思われた。
すべて 2005
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