研究概要 |
1.アンドロゲン不応症(AIS)患者由来の変異型アンドロゲン受容体(AR)の細胞内動態の解析 AIS患者由来でDNA結合ドメインにアミノ酸置換を有する変異型AR(AR-C579F)の細胞内動態を、GFP融合タンパク質を用いて解析した。野生型ARはリガンド処理後に細胞質から核に速やかに移行して細かいfociを形成するのに対して、AR-C579Fはまず細胞質に大きなdotを認め、遅れて核に少数で大きいdotを形成した。細胞内小器官に特異的に局在する蛍光物質を用いた二重染色やGFP抗体を用いた免疫電顕の結果から、AR-C579Fの細胞質のdotはミトコンドリアの近傍に位置することが明らかになった。また核内fociに対するFRAP解析の結果、AR-C579Fは野生型ARに比べて、核内でのmobilityが低下していた。このようなAR-C579Fの核移行障害、核内における局在の障害および核内でのmobilityの低下がAIS発症の原因であることが示唆された。 2.FRETシステムの構築 ARとCFP、ARと直接結合することが報告されている転写共役因子SRC-1あるいはTIF2とYFPの融合タンパク質をそれぞれ発現するベクターを作製した。両者をCOS-7細胞で発現させて、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、FRET解析の条件設定を行っている。 3.Runx2タンパク質による、ステロイドホルモン受容体を介する転写活性化の抑制 骨芽細胞分化に必須であるRunx2が、骨芽細胞株においてAR, ER, GRの転写活性化を抑制することを明らかにした。Runx2発現によりARのリガンド依存性のfoci形成が阻害されることから、Runx2は、ARの正常なコンパートメントへの局在を阻害することによって、ARの転写活性化を抑制することが示唆された。
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