研究概要 |
1.アンドロゲン不応症患者由来の変異型アンドロゲン受容体(AR)の細胞内動態解析 完全型および不完全型のアンドロゲン不応症患者由来の2種類の変異型AR(AR-C579F,AR-F582Y)の細胞内動態を、GFP融合タンパク質を用いて解析したところ、野生型ARはリガンド処理後に細胞質から核に速やかに移行して細かいfociを形成するのに対して、変異型ARはまず細胞質に大きなdotを認め、遅れて核に少数で大きいdotを形成した。免疫電顕の結果から、変異型ARの細胞質のdotはミトコンドリアの近傍に位置することが明らかになった。またFRAP解析の結果、変異型ARは野生型に比べて、核内でのmobilityが低下していた。このような変異型ARの核移行障害、核内における局在の障害および核内でのmobilityの低下がAIS発症の原因であることが示唆された。 2.新規コリプレッサーTZFおよびTobによるAR転写活性化抑制メカニズムの解析 我々は、精巣で特異的に発現するZnフィンガータンパク質であるTZFが、ARの転写活性化能を抑制し、リガンド依存性にARと共局在することを見出した。TZFはARのアミノ末端側と結合した。TZFの欠失ミュータントを作製したところ、TZFの中央部分(アミノ酸512-663)が、ARとの結合および核内共局在に必須であることが明らかになった。TZF複合体はピストン脱アセチル化酵素活性を有しており、HDAC2が複合体中に検出された。GFP融合タンパク質を用いてARとTZFの細胞内動態を調べたところ、TZFの共発現によって、ARのリガンド依存性核内foci形成は抑制された。このTZFによるARのfoci形成の抑制は、コアクチベーターであるTIF2の発現によって回復することから、ARのfoci形成と転写活性化能は相関することが示された。 また、骨芽細胞分化を抑制するTobタンパク質もARの転写活性化を抑制することが明らかになった。
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