アルドステロン(Aldo)には細胞質のミネラルコルチコイド受容体(MR)およびDNAの転写を介したゲノム作用と、MRやDNAの転写を介さずに作用を発現する非ゲノム作用が報告されている。ゲノム作用は発現に数時間を要するのに対し、非ゲノム作用は秒〜分単位で作用を発現するとされている。Aldoの標的臓器障害の一部は非ゲノム作用による可能性が推測されているが詳細は明らかでない。本研究ではAldoのゲノム作用および非ゲノム作用を検討するため、in vivoおよびin vitroの実験を行なった。1)in vivo:8週齢のWistarラットにAldoおよび、ゲノム作用を阻害するMR受容体拮抗薬スピロノラクトン(SPRL)あるいは非ゲノム作用阻害が報告されているMR受容体拮抗薬エプレレノン(EPL)を2ヶ月間投与した。大動脈における酸化ストレスへの影響を検討するためNADPHのコンポーネントであるNOX-4、p22-phox、p91-phox mRNA発現を検討した。その結果、AldoはNADPHコンポーネント発現に影響を及ぼさなかったが、SPRLはすべてを有意に抑制、EPLはp22-phox、NOX-4 mRNA発現を有意に抑制した。2)in vitro:正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた。2%ウシ胎児血清を添加したendothelial cell basal mediumにて3次培養まで行なった後、2日間低血清培地で培養した。次いで、無血清培地下でAldo (10^<-7>〜10^<-9> M)あるいはアンジオテンシン(Ang)II(10^<-7>〜10^<-9>M)刺激を行い、酸化ストレスへの影響を検討するため、NOX-4、p47-phox mRNA発現を検討した。その結果、投与後短時間の検討ではAldo、Ang IIともに5分、10分の短時間においてNOX-4 mRNA発現に影響を与えなかった。また、投与後長時間の検討ではAldoは2〜8時間の間で濃度および時間依存性にNOX-4 mRNA発現を抑制したが、Ang IIは影響を与えなかった。p47-phox mRNA発現は検出されなかった。以上よりAldoの細胞障害の一機序としての酸化ストレスにゲノム作用が関与すると考えられるが、非ゲノム作用が関与する可能性が低いと考えられた。
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