本研究ではアルドステロン(Aldo)のゲノム作用、非ゲノム作用を検討するため、1)Aldoを投与したラットにゲノム作用を阻害するMR拮抗薬スピロノラクトン(SPRL)を投与し臓器保護作用を検討した。2)高血圧とレニン・アンジオテンシン(Ang)・Aldo系の亢進を示すモデルラットSHR-SPにSPRLあるいは非ゲノム作用を有することが示唆されている新規MR拮抗薬エプレレノン(EPL)を投与して臓器保護作用を検討した。3)ラットにAldoおよびSPRLあるいはEPLを2ヶ月間投与し、心臓における酸化ストレスへの影響を検討した。4)培養正常ヒト内皮細胞にAldoあるいはAngIIを添加し酸化ストレスへの影響を検討した。結果は1)SPRL群では心臓collagen、BNP mRNA発現が有意に低下し、SPRLによるゲノム作用阻害が臓器保護作用を発現することが示された。2)SPRL群では心臓collagen、腎collagen mRNA発現は有意に減少したが、無治療群と比べ血中レニン、AngIIAldo.濃度は有意に高値で、心臓BNP、ET-1 mRNA発現の増加、腎糸球体硝子化、間質線維化、尿細管萎縮、腎動脈内膜の肥厚、大動脈壁厚などの増悪を示した。EPLR群では心臓collagenに加えてBNP mRNA発現は対照群と比較して有意に減少し、ET-1 mRNA発現は対照群と不変で増加を認めなかった。SPRLとEPLの臓器保護作用に対する差が非ゲノム作用に関連する可能性が示唆された。3)ラットにおいてAldoはNADPHコンポーネント発現に影響を及ぼさなかったが、SPRLはコンポーネントすべてを有意に抑制した。4)Aldo、AngIIもに数分の短時間ではNOX-4 mRNA発現に影響を与えなかった。また、Aldoは2〜8時間の間で濃度および時間依存性にNOX-4 mRNA発現を抑制したが、AngII影響を与えなかった。以上よりAldoの細胞障害の一機序としての酸化ストレスにゲノム作用が関与すると考えられるが、非ゲノム作用が関与する可能性は低いと考えられた。
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