研究課題/領域番号 |
16590927
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
曽田 泰 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00361618)
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研究分担者 |
東條 有伸 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00211681)
川崎 広明 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (60332623)
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キーワード | フィラデルフィア染色体 / 急性リンパ性白血病 / 遺伝子治療 / bcr-abl / RNAi / HIVベクター |
研究概要 |
本研究では、白血病の中でも特に難治性で予後不良なフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(Ph^+ALL)の遺伝子治療法の開発を目的としている。具体的には、PhにコードされたPh^+ALLの病因遺伝子P190タイプbcr-abl遺伝子を、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)によりノックダウンして細胞死を誘導することを目標とした。最初にtRNA^<Val>またはH1により発現がコントロールされるshRNA発現プラスミドを各6種類づつ設計した。BCR-ABL強制発現細胞にトランスフェクションしてbcr-abl mRNAの変化をリアルタイムRT-PCR法で調べたが、最高でも約半分に減少させたに過ぎなかった。細胞死の誘導にはより強力なbcr-ablのノックダウンが必要と考えられるため、プロモーターをより強力なU6に変更した。さらにより強力なサイレンシング効果を持つshRNA配列を決定するためにbcr-abl遺伝子の融合部位を中心に1塩基ずつずらして合計20種類の21塩基のshRNAを設計した。また、最近21塩基よりも強力なサイレンシング効果を示すことが報告された27塩基のshRNAも合計14種類設計した。BCR-ABL強制発現293細胞へのこれらのshRNA発現プラスミドをトランスフェクションしたところ、21塩基のものでは最高70%のBCR-ABL蛋白の抑制が得られた。また、27塩基のshRNAでは最高80%超の蛋白抑制効果が認められた。リアルタイムPCRのよるmRNA量の変化も同様に抑制されたが、その程度はやや弱く、翻訳レベルでの抑制の存在が示唆された。また、正常c-ablおよびc-bcrに対する影響についても検討した結果、bcr-ablに対してより特異性の強い21塩基および27塩基のshRNAをそれぞれ2種類ずつ選択することができた。次に得られたshRNAをHIVベクタープラスミドにU6プロモーターとともに挿入し、VSVシュードタイプHIVベクターを生産した。得られたshRNA発現HIVベクターをBCR-ABL強制発現293T細胞に感染させたところ、直接トランスフェクションした揚合と同様に著明なBCR-ABL蛋白量の減少が認められ、本ベクターの有効性が確認された。今後Ph^+ALL細胞にshRNA発現HIVベクターを感染させ、細胞障害性が得られるか検討する予定である。
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