我々は変異FLT3発現細胞株に対する増殖抑制効果を指標にしたハイスループットスクリーニングにより、数十nMのIC_<50>値を示す新規FLT3キナーゼ阻害剤を見出した。本研究においては、FLT3を標的分子とした新規治療法の開発を最終目標として、この薬剤の白血病治療におけるproof of principleを確認すべく基礎的検討を行い、下記の結果を得た。 1.各種タイプの変異FLT3発現32D細胞を同系のC3Hマウスに静注することにより、約7日目には白血病の全身性浸潤を認め、2週間以内には全例死亡したが、これら白血病発症マウスに、静注後10日目より薬剤の投与を2週間行うと治癒が得られた。これらの結果により本剤はマウス白血病を治癒に導くことが可能であり、POPは確認された。 2.既存の抗白血病治療薬であるAra-Cと抗腫瘍効果ならびに骨髄抑制に対する効果を定量PCR法、FCM法を用いて検討した。変異FLT3発現32D細胞をC3Hマウスに静注後10日目より4日間の薬剤投与を行い、治療前後での末梢血中白血病細胞数の変化を定量PCR法を用いて検討した所、阻害剤投与群では、治療により白血病細胞数の減少が認められたのに対し、Ara-C群では、治療効果を認めなかった。一方、治療後の骨髄中の白血病細胞の割合をFCMで定量化によっても同様の結果が得られた。注目すべき点は、Ara-C治療群においては、骨髄細胞数が約1/10に著減していたのに対し、阻害剤治療群では、ほとんど骨髄抑制を認めなかった。 3.上記の検討により、新規FLT3阻害剤の有用性は確認されたが、実際の臨床使用においては、その効果を予測するサロゲートマーカーが必要である。リン酸化STAT5は、その有力な候補であるが、我々はFCMでも使用可能なリン酸化STAT5抗体を作製し、短時間の阻害剤処理前後でSTAT5リン酸化状態の変化を比較することにより、増殖抑制効果を予測する検査システムを構築した。
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