研究課題/領域番号 |
16590934
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 晃士 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (90362251)
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研究分担者 |
松下 正 名古屋大学, 医学部付属病院, 講師 (30314008)
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学部, 教授 (40161913)
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キーワード | 血栓症 / 肥満 / 糖尿病 / 線溶 / ストレス / 動脈硬化 / サイトカイン / 脂肪細胞 |
研究概要 |
肥満・糖尿病のモデルとして遺伝的肥満マウス(ob/obマウス)を用い、抗線溶因子PAI-1の発現について解析を行い、血栓傾向の分子メカニズムを検討した。8週齢のob/obマウスでは対照マウスと比較して血漿中の活性型PAI-1抗原値は約4倍と高値であり、心臓、肺、肝臓、筋肉などの各組織においても1.5〜2倍と有意なPAI-1 mRNAの発現増加を認めた。中でもob/obマウスの脂肪組織(内臓脂肪、皮下脂肪、精巣上体周辺の脂肪など)では、単位RNA当たりのPAI-1 mRNA発現量が対照マウスの4〜5倍と顕著な発現増加をきたしていた。また、ob/obマウスの脂肪組織におけるPAI-1 mRNAの発現は、脂肪細胞だけではなく、血管平滑筋細胞や血管内皮細胞においても著明に増強しており、週齢を重ねるにしたがってより顕著となった。 外因系凝固の起始因子であるTFの発現も、ob/obマウスでは亢進していた。脂肪組織におけるTF mRNA発現は、12週齢のob/obマウスで対照マウスの3〜7倍、12ヶ月齢では20倍以上に亢進していた。このTF mRNA発現増加も脂肪細胞自体によることがわかったが、脂肪組織内の血管を構成する細胞(血管外膜細胞)においてもTF mRNA発現の増強が認められた。ob/obマウスにおけるTF mRNAの発現増加は脂肪組織以外の主要臓器でも顕著であり、臓器特異的な実質細胞において認められた。12週齢のob/obマウスでは、脳(神経細胞)、肺(気管支上皮細胞)、心臓(心筋細胞)、腎臓(尿細管上皮細胞)、肝臓(Kupffer細胞)などにおいても対照マウスの2〜4倍のTF mRNA発現を認めている。PAI-1に加え、肥満個体におけるこのようなTFの発現増加が、全身的な凝固亢進状態を増幅しているであろうと推測された。 また、脂肪組織におけるPAI-1およびTFの発現を強力に誘導すると考えられるTGF-βの発現もob/obマウスおよびdb/dbマウスの脂肪組織で週齢依存的に増加しており、それは脂肪細胞自体におけるTGF-β産生亢進によることが明らかとなった。これらの事実より、糖尿病、インスリン抵抗性、血栓傾向、動脈硬化など肥満に関連した病態の進展にとってTGF-βのメディエーターとしての役割は非常に重要であろうと考えられた。
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