リンパ系悪性腫瘍である成人T細胞白血病(ATL)細胞におけるインターロイキン21(IL-21)/インターロイキン21受容体(IL-21R)システムの働きについて詳細な検討を行なった。リアルタイムRT-PCR法によりIL-21R mRNAは、ATL細胞株を含む7種類のHTLV-I感染細胞株全てで高発現を認めた。またATL患者11例中10例で健常人末梢血単核球より高い発現が認められ、そのうち2症例においてはPHA blastに比し有意に高い発現が認められた。対照的にIL-21 mRNAの発現はいずれにおいても低く、autocrine機構による関与は否定的と考えられた。さらにIL-21Rの蛋白レベルでの発現を検討するため、我々が作製したヒトIL-21Rに対するマウスモノクローナル抗体(IM-125)を用いて細胞表面でのIL-21Rの発現をフローサイトメトリーで解析したところ、ATL細胞においては、今回用いた3種類の細胞株全てで強い発現があり、患者検体では白血病細胞においても明らかな発現を認めた。次にその機能解析のため、ATL細胞株を用いてIL-21刺激による増殖試験を行なったところ、用量依存性に増殖が誘導された。また細胞内シグナルに関しては、IL-21は細胞株、患者検体共に、強いStat3のリン酸化と、それに比して弱いStat5のリン酸化を誘導した。これに対してIL-2やIL-15ではStat5のリン酸化が誘導され、Stat3は弱い発現に留まった。ATL細胞においてStat3の恒常的活性化が認められるとした報告があり、IL-21がparacrine機構によって、この活性化に関与している可能性が考えられる。以上の結果より、ATL細胞が機能的なIL-21Rを発現していることが明らかとなり、IL-21/IL-21RシステムがATLのがん化・増殖に関与している可能性が示唆された。
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