研究概要 |
本年度は、GPIIb-IIIa蛋白(インテグリンαIIbβ3)の構造と機能を遺伝子組み換え蛋白発現の技術を用いて調べた。GPIIb-IIIa上のリガンド結合に重要であると考えられている領域のアミノ酸に対するアラニンスキャニングを広範囲に適用することによってインテグリンの活性化に重要な新たなアミノ酸を特定し、GPIIb-IIIaの構造をアミノ酸レベルで解析した。その結果、GPIIbのW2:2-3 loopに存在するQ111,H112およびN114がリガンド結合に重要であることを見出した。さらにGPIIb鎖細胞内ドメインにあるArg-Pro-Pro配列がGPIIb-IIIaの活性化を抑制していることを明らかにした。また、ITP患者からGPIIb由来ペプチド(#429-443)を特異的に認識するHLA-DR^*0405拘束性CD4陽性T細胞株を樹立した。このT細胞は血小板を自己樹状細胞に取り込ませて抗原提示させた系においても細胞増殖反応とサイトカイン産生を示したことから、GPIIb#429-443が自己反応性T細胞エピトープとなりうることを証明した。そこで、現在、複数のITP患者からGPIIb反応性CD4陽性T細胞のクローニングを行っている。GPIIb反応性T細胞の分離効率を上げるため、当大学で開発された無細胞蛋白合成装置を用いてGPIIb蛋白を作成したところ、効率よくwhole GPIIb proteinを合成することができた。これを用いて、GPIIb反応性T細胞の樹立を試みている。
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