本研究課題で行った研究にて、申請者は以下の知見を得た。 1.再発小児急性リンパ性白血病(ALL)における各種癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化の検討。再発小児ALL9例を対象に、11遺伝子について、methylation-specific PCR法を用いて、DNAメチル化パターンを解析した。各々の遺伝子におけるメチル化の頻度はMGMT56%、RARβ44%、p1622%であった。p14、p15、Rb、APC、hMLH1、RIZ、DAPK、FHITのメチル化は認められなかった。9症例中5例(56%)で、検討遺伝子の少なくとも1つにメチル化が認められた。再発時にp16にメチル化を認めた症例とMGMTにメチル化を認めた症例は、全症例で初診時に既にメチル化が認められていた。一方、再発時にRARβにメチル化を認めた4症例中3例で初診時にメチル化を認めなかった。以上の結果より、複数遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化が小児ALLの発症ならびに再発に関与していることが示唆された。 2.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)におけるAPC遺伝子およびMLH1遺伝子プロモーターのメチル化の検討。 31例のATL検体のうち48%の検体においてAPC遺伝子の、また6%の検体においてMLH1遺伝子の異常メチル化がそれぞれ認められた。臨床病期別の検討では、慢性型より急性型においてより高頻度にAPC遺伝子の異常メチル化が認められた。APC遺伝子およびMLH1遺伝子の異常メチル化を有する細胞株は、APC遺伝子およびMLH1遺伝子を発現していなかったが、この細胞を5-Azacytidineで処理すると、APC遺伝子およびMLH1遺伝子の発現が回復した。以上より、APC遺伝子およびMLH1遺伝子の異常メチル化はATLの発症および進展に関与していると考えられた。
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