本研究は進行癌患者を対象として開発された癌ペプチドのうち患者末梢血リンパ球中のキラーT細胞前駆体に認識されるか、もしくは血清中にペプチド特異的IgG抗体の存在が確認されたペプチド最大4種類(テーラーメードマルチペプチド)を用いて樹状細胞をパルスし、患者の皮内に接種するものである。これまでの臨床研究に関する実績は以下のとおりである。 (1)細胞プロセッシングルームにおけるGMPグレードの標品作成 九州大学病院内に専用施設(細胞プロセッシングルーム)を開設し、作業中にエアーサンプラーならびにパーティクルカウンターにより環境測定を行い、それぞれ基準値内であることを確認した。また、培養液中の細菌、真菌、マイコプラズマはいずれも陰性であった。 (2)倫理委員会へのプロトコールの提出 本「テーラーメードマルチペプチドパルス成熟樹状細胞を用いた癌免疫療法臨床研究」プロトコールを九州大学医学部倫理委員会へ提出し、平成16年1月22日に承認された。 (3)症例検討会の設置 本臨床研究へのエントリー患者はすべて九州大学病院臨床研究センターにおける症例検討会に諮った。その結果36人の登録患者のうち6人が検討会において承認され、4人に対して治療を行った。2人は原病の悪化のために治療を中止あるいは中断した。 (4)患者への皮内接種 治療を行った4症例のうち3症例に対して3×10^6個の、1症例に対して1×10^7個の樹状細胞を投与した。その結果、接種部位局所の発赤以外に治療による有害事象を認めなかった。抗腫瘍効果はRECISTガイドラインに従っていずれもPDであった。1症例に関して腫瘍マーカーの軽度の低下を認めた。現在、さらに詳細な免疫学的な解析を行っている。
|