これ迄、その破綻が細胞の腫瘍化に繋がる機構としての細胞増殖の負の調節機構の解明に取り組んできた。特に増殖因子により発現増強を受け、且つ、増殖抑制/細胞死を誘導する、つまり、負のフィードバック機構の中で働く分子の同定を行ってきた。本研究では、その候補分子の一つとして最近新しく見出した蛋白質MAIR (macrophage-derived apoptosis-inducing RBCC)の機能を明らかにする事を目的としている。これ迄に、MAIRがサイトカイン(macrophage colony-stimulating factor等)刺激により、マクロファージの中で発現誘導される事、そして、種々の培養細胞株でのMAIRの過剰発現がアポトーシス細胞死を誘導する事を明らかにしてきた。又、MAIRはN末端から順に、C3HC4 zinc finger (RING finger)、B-box zinc finger、coiled-coilそしてB30.2(SPRY)領域から成るが、アポトーシス誘導にはこの内、RING fingerとcoiled-coil領域が必要である事を明らかにしてきた。更に、MAIRは細胞質内では核の周りにドット状に局在する蛋白質であるが、変異蛋白質を用いた解析から、この局在性がアポトーシス誘導機能に必須である事も明らかにした。ドット状に局在する事から、MAIRと会合する分子の存在が考えられ、そしてその会合がアポトーシス誘導機能に重要である事が推察される。これ迄に、Yeast Two Hybrid法を用いて、MAIR会合分子の一つとしてpoly (ADP-ribose) polymeraseを同定している。今後、この会合のMAIRの機能における意義を詳細に解明していくと共に、別の会合分子の同定を二次元電気泳動/質量分析を用いて行っていく予定である。
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