マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)は単球・マクロファージの増殖・分化・活性化に必須なサイトカインである。これら生物活性の正の制御機構は精力的に解析がなされてきたが、負の制御機構については未解明の点が多い。そ破綻が腫瘍化の一因である事を考えると、M-CSFシグナル伝達においてどのようにフィードバック機構が調節されているかの解明は重要な問題である。 MAIR/TRIM35はM-CSF刺激下に発現増強される新規遺伝子として単離した遺伝子である。その産物はRBCC蛋白質ファミリーの一つである。興味深い事に、MAIR/TRIM35は幅広い細胞に対して強い細胞死を誘導する事を明らかにした。4つの機能領域(RING finger、B-box、coiled-coil、SPRY)の内、RING-fingerとcoiled-coil領域が細胞死誘導機能に必須であった。また、MAIR/TRIM35によって誘導される細胞死は、ミトコンドリア膜低下およびcaspase3の活性化を伴うアポトーシスであった。一方、MAIR/TRIM35は細胞質内で極めて大きなaggregateとして存在する。そして、細胞死誘導能を欠損する変異体はaggregateを形成しない事から、細胞質内での存在様式が機能と相関する事が明らかとなった。 M-CSFは本来、細胞増殖刺激因子であるが、同時に細胞死誘導因子であるMAIR/TRIM35の発現を誘導する事が明らかとなった。今後、MAIR/TRIM35の機能を担う分子機構を解析する事で、サイトカイン受容体シグナルとの関連が明らかになると予想される。
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