発作性夜間血色素尿症(PNH)における免疫機序による造血障害、骨髄異形成症候群(MDS)/白血病の合併、さらにはPIG-A変異クローンの発生などは再生不良性貧血(AA)でも共通して認められることから、我々がPNHで見出した"変異クローンが発生しやすい造血環境"がAAでも同様に病態に関与する可能性が想定される。また、MDSにおいても免疫学的機序による造血障害や白血病クローンの高頻度出現など、AAやPNHと緊密性が高い。抗胸腺免疫グロブリンやシクロスポリンなどの免疫抑制療法の進歩によりAAの予後は飛躍的に改善しつつある一方で、晩発性のクローン性疾患(PNH、MDS、acute leukemia)の合併が新たな予後因子となり解決すべき課題となっている。これらクローン性疾患の発生機序を明らかにすることは、その発生前診断や治療法選択など診療面にも大きく貢献するものと推測される。そこでPNHにおける好変異性造血環境を実証した経験を生かし、AAをはじめとする造血不全疾患における変異クローン発生機序解明のために本研究を実施した。 この好変異造血環境を検索するため、AA患者末梢血リンパ球を、チオグアニン含有培地で2週間培養した。その結果AA患者5例中5例でコロニー形成を認めなかった。骨髄造血前駆細胞においては3例中1例にわずか1コロニーが形成されたのみであった。また、MDS患者末梢血では2例中2例ともコロニーは形成されなかった。また、MDS骨髄でもコロニー形成はなかった。これらの事実よりAAやMDS患者血球はPNHに比較し、コロニー形成を阻害する何らかの因子が存在すると考えられた。
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