研究課題/領域番号 |
16590950
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西片 一朗 宮崎大学, 医学部, 助手 (50253844)
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研究分担者 |
白神 俊幸 宮崎大学, 医学部, 助手 (70363596)
森下 和広 宮崎大学, 医学部, 教授 (80260321)
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キーワード | EVI1 / t(3;3)転座 / EVI1欠損マウス / 造血幹細胞 / GATA-2 / PCAF / トリコスタチンA / 白血病発症機構 |
研究概要 |
EVI1遺伝子によるGATA-2転写調節と白血病発症機構 【目的】EVI1遺伝子は、t(3;3)転座を有する急性骨髄性白血病の責任遺伝子として、転座点近傍より単離された転写因子である。発見から20年余たった現在まで、その機能は十分に解明されたわけではなく、白血病発症機構も不明のままであった。昨年、我々はEVI1欠損マウスにおける造血細胞の発生を解析し、EVI1がGATA-2遺伝子に対して直接的な発現制御を行い、造血幹細胞の維持・分化に関与しうることを明らかした(湯浅ら、第66回日本血液学会)。本年度は、この研究成果を踏まえ、各種白血病細胞を用いてEVI1によるGATA-2遺伝子の発現調節と白血病発症機構との関係を検討した。 【方法】マウスSCF依存性EML-C1、マウスIL-3依存性L-G3及びNFS58、ヒトHEL及びMOLM1等の細胞群を用い、EVI1によるマウスGATA-2プロモーター領域に対する転写調節を調べた。 【結果・考察】EML-C1やHELにおいてEVI1発現に伴うGATA-2遺伝子ISエクソンからの転写促進、逆にL-G3においては同領域に転写抑制が見られた。EML-C1、HELにおける転写はGATA-2 IS領域上流6-7kbに存在するEVI1結合DNA配列に直接結合することにより活性化した。EVI1の第一DNA結合ドメイン及びC末側に存在する酸性アミノ酸領域欠失変異体によりGATA-2プロモーター活性能が失われた。この活性化にはEVI1とヒストンアセチル化酵素PCAFとの相互作用、EVI1のアセチル化が関与することが示唆された。逆に、L-G3では同じ領域にEVI1が結合することで転写が抑制された。L-G3におけるEVI1遺伝子の発現はG-CSFによる細胞分化抑制能を持つ。この細胞分化抑制能はトリコスタチンAの添加により回復する為、ヒストン脱アセチル化酵素HDACの関与によるEVI1遺伝子の転写抑制が関係している。またNFS58及びMOLM1でも、GATA-2 IS領域上流6-7kbに存在するEVI1結合DNA配列を含むレポーター遺伝子で、GATA-2の転写活性化が認められた。以上、白血病細胞におけるEVI1に依存したGATA-2の発現調節に違いが見られたことから、EVI1の異所性発現による転写制御の変化が白血病発症につながることが示唆された(西片ら、第66回日本血液学会・第63回日本癌学会・第77回日本生化学会・第27回日本分子生物学会)。
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