1.マウス巨核球がPPF刺激因子(HDL/TAT)で刺激を受けた際、どのようなシグナル伝達系を介してPPFを引き起こすかについてキナーゼ阻害剤を用いて検討する。 マウス巨核球をPercoll比重遠心法、BSA濃度勾配法を用いて部分精製した。PPFはRhoキナーゼの阻害剤Y27632(10μM)添加で有意に増加し、PI3K阻害剤LY294002(100μM)、Srcfamilyキナーゼ阻害剤PPI(20μM)で有意に減少したことからRho/Rac系が関与していると考えられる。HDL/TATの刺激はRac/cdc42系を介してPPFを引き起こす。その上流にはPI3キナーゼとSrc familyキナーゼが存在する。RhoはRac/cdc42とは拮抗的に作用しているものと考えられる。 2.マウス巨核球の精製とWestern blotによるシグナル伝達系の解析 AutoMacsを用いて、マウス骨髄細胞からstem cell antigen(SCA-1)陽性細胞を精製した。血清存在下でc-kit ligandならびにTPOと培養してCD61陽性細胞の比率をフローサイトメトリにて測定したところ、純度は約50〜60%でマウス巨核球を精製することが可能となったが、9x10^7のマウス骨髄細胞から3.6x10^3のSca-1(+)細胞しか得られなかった。それらを培養しても5x10^4程度しかマウス巨核球が得られないという結果となった。Western blotに必要な10^6程度のマウス巨核球を得ることは、上記の方法では難しいと考えた。が、一部の実験ではマウス20匹を用いて上記の方法でマウス巨核球を精製し、シグナル伝達系蛋白のWestern blotを検討した。マウス巨核球をPPF刺激因子で刺激し、Racの活性化を検討した。活性型Racは60分で増加し180分でもとに復した。リン酸化cofilinは60分で増加し以後低下した。 以上により、HDL/TATの刺激はPI3キナーゼとSrc familyキナーゼを介してRac/cdc42を活性化する。活性化したRac/cdc42はcofilinをリン酸化しアクチンのdepolymerizationを阻害し、アクチンの伸展を引き起こすものと考えられた。
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