研究概要 |
我々はこれまでにimatinib耐性細胞株KCL22SRをクローニングし、a)BCR/ABLの下流に存在する情報伝達系の調節異常と耐性との関連、b)低分子量G蛋白質RhoAの耐性細胞における発現増強等を見いだした。更にNrf2転写因子がimatinib耐性に関与しているという興味深い知見も得られている。本研究では、imatinib耐性機序についてRhoA、Nrf2との関連に着目した。また、新規分子標的薬によるimatinib耐性解除の可能性について分子レベルで検討した。 1.今回新たにimatinib耐性株K562/SRおよびKU812/SRをクローニングした。imatinib耐性株におけるRhoAの発現を解析したところ、特にKU812/SRで著明に増強していることを見いだした。次に、imatinib耐性株と親株におけるRac1,Cdc42等の低分子量G蛋白質(G protein)群とその下流にある分子群の発現について検討したが、明らかに発現量に差のある分子は見いだし得なかった。 2.最近、Nrf2の活性がヘムによって調節されるという報告がなされた。KCL22細胞にヘミンを添加するとimatinibによるアポトーシス関連因子の誘導が阻害され、用量依存的にimatinibに対する耐性が増加した。この揚合、1)Nrf2による転写活性、2)Nrf2によって発現が調節されるγ-GCSおよびHO-1の発現増強が観察され、siRNAによるNrf2の発現抑制により、ヘミンによるimatinib耐性増加が部分的に解除された。また、ヘム合成系の阻害薬サクシニルアセトンをKCL22/SRおよびKU812/SRに添加するとimatinibに対する感受性が部分的に回復した。従って、ヘムがNrf2活性を介してimatinib感受性を調節しているものと思われた。 3.Faenesyltransferase阻害薬R115777との併用により全てのimatinib耐性細胞株において1)相乗的な細胞増殖抑制2)アポトーシスの誘導および3)G_0G_1期にある細胞比率の増加が認められた。しかし、細胞によりアポトーシス誘導の程度には差がみられたことから、それぞれの細胞による反応の多様性が示唆された。
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