研究概要 |
慢性肉芽腫症に対する選択的増幅遺伝子を用いた遺伝子治療臨床応用に向けた技術開発 1.治療遺伝子(gp91^<phox>)導入細胞の移植実験 1)移植前処置の最適化の検討 昨年までの検討で、前処置を何も行わない条件での、尾静脈移植(IV-BMT)および骨髄内移植(iBMT)の両群間で移植生着効率に有意差はなく、かつ生着効率も極めて低値であることが分かった。 このため、本年度は非致死的放射線照射(2Gy)を前処置として用い、IV-BMTとiBMTの両群で比較した。この結果、両者で生着は確認でき、治療遺伝子の発現で活性酸素産生率(IV-BMT 10%,iBMT 30%)と高値を示した。 2)選択的増幅遺伝子によるin vivo増幅 選択的増幅遺伝子(SAG)システムを搭載したレトロウイルスベクターに治療遺伝子(GP91^<phox>)を組み込んだベクターを昨年度までに作成したため、これを遺伝子導入した細胞をマウスモデルに移植し、動作を確認した。 この結果、非致死的照射による前処置後に、iBMTを行ったマウスで生着が確認でき、さらにSAGの分子スイッチであるエリスロポエチン(EPO)投与後、一過性に治療遺伝子を導入した細胞数の末梢血での増加が確認できた。これにより、活性酸素産生細胞の増加が達成できた。しかし、選択的増加は一過性で、EPO刺激依存性であった。 3)安全性の検討 LAM-PCR法を用いた、レトロウイルスの遺伝子組み込み部位(インテグレーションサイト)の解析をした。 これまでの遺伝子導入したマウスの血液細胞を経時的に追跡した結果、特異的な組み込み部位の増加はみられず、ベクターウイルスのランダムな組み込みを確認した。今後も長期に観察する予定である。
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