造血幹細胞および白血病幹細胞マーキングの候補としてのSide Population(SP)細胞の検討を行った。SP細胞は、造血幹細胞の集団が濃縮されていること、そのほとんどが、G0期にあり細胞分裂を起こさない状況にいること、さらに抗がん剤やG-CSFの投与によって末梢血に動員されている造血幹細胞ではそのほとんどがSPという性質を失っていること、しかしながら、SPではない造血幹細胞を移植し数ヶ月後、幹細胞が再構築した後再びSPという形質を獲得することなどが判明した。このことは、造血幹細胞の状態によってSPという形質を獲得したり、あるいは失うといった現象がおこるということを示唆している。そこで、造血幹細胞がSPという形質を獲得する要因を検討した結果、ストローマ細胞との接着がその形質の獲得に影響を与えることが判明した。一方、活性酸素が上昇した状況ではその形質を失うことから、幹細胞が骨髄のニッチにおいて存在することによって、幹細胞内の活性酸素を低下させSPという形質を獲得すると考えられた。白血病幹細胞の特定のため、白血病モデル系の樹立を試みた。造血幹細胞にレトロウイルスベクターにてがん遺伝子Meis1とHoxA9を導入し、放射線照射マウスに移植すると約50日後には骨髄性白血病が発症した。この白血病マウスの骨髄にはSP分画が存在した。しかしながら、移植実験により、これらのSPに白血病幹細胞は濃縮していないことが判明した。他の白血病モデルでの検討が必要であるが、以上の結果は、SP細胞が必ずしも白血病幹細胞のマーカーになり得ないということを意味している。文献的にヒト白血病の臨床検体を用いた検討でも、SP細胞が白血病幹細胞であるかどうか、議論の分かれるところであり、それを否定する報告もある。今回の研究結果はそれを支持するものであり、今後、別のマーカーを探索することが必要であると考えられた。
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