造血器腫瘍の新しい分子標的療法を開発し、臨床的に効果のある治療法の開発を目指す。本研究では次世代型ABLチロシンキナーゼ阻害剤(dasatinib)とimatinibとの相乗効果の分子メカニズムをDNAマイクロアレイを用いて解析した。K562細胞をdasatinibまたはimatinibと共に培養後、DNAマイクロアレイに誘導される遺伝子群について解析したところ、大多数の遺伝子は重複して抑制されていたが、dasatiniにて特異的に発現抑制が見られた遺伝子群の中でCDK2、CDK8を同定した。CDK2、CDK8 siRNAを用いることによりdasatinibとimatinibの相乗効果にCDK2、CDK8の関与が確認された。さらにThr315はBCR-ABLのキナーゼドメインの中心部に位置しており、ATP結合部位を覆っているため、ABLキナーゼ阻害剤に対してgatekeeperと呼ばれている。T315I変異型BCR-ABLはimatinib抵抗性Ph陽性白血病の約20%に認められる変異であり、第2世代型チロシンキナーゼ阻害剤、dasatinib及びnilotinibも無効であるため、有効な治療法は確立されていない。VE-465はATP競合型のAuroraキナーゼ阻害剤であり、BCR-ABL、Jak-2、Flt-3に対しても阻害効果を有する。本研究ではVE-465のWT BCR-ABL及びT315I BCR-ABLに対する生物活性を明らかにし、Ph陽性白血病に対する有用性を検討した。VE-465はp185BCR-ABL、T315IBCR-ABL共にキナーゼ活性をIC_<50>値2-5μMにて抑制した。VE-465、imatinib併用によりK562細胞においてアポトーシス誘導の増加、Caspase-3、PARPの活性化及びAkt、c-Mycの活性低下が確認された。VE-465はin vivoにおいてもT315IBCR-ABLキナーゼ活性を阻害し、BaF3 BCR-ABL移植マウスの生存期間を延長させた。
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