研究概要 |
Etsファミリー転写因子およびホメオドメイン蛋白質は、血球分化や白血病の発症に深く関与している。そこで本研究ではこれらの物理的、機能的相互作用について解析した。 Ets結合配列を持つレポーターアッセイにより、ホメオドメイン蛋白質HoxA10とHoxC13はEtsファミリー転写因子のうちPU.1とSpi-Bに対しては協調的に、Elf-1,Erg-3,Ets-2に対しては拮抗的に働くことが示された。またMeis1はEts-1とEts-2に対して拮抗的に働くことが示された。 そこでこれらの組み合わせの中から、リンパ球系、骨髄球系両細胞の分化に関与するPU.1とElf-1、染色体転座を通じて白血病の発症に関与するHoxC13に注目して物理的相互作用を検索した。免疫沈降法によりPU.1とHoxC13あるいはElf-1とHoxC13はそれぞれ結合することが示された。またこれら蛋白質の欠失変異体を用いたGST pull-down法により、HoxC13はホメオドメインの中間よりC末端側の部分を介してPU.1、Elf-1と結合すること、PU.1はEtsドメインを介してHoxC13と結合することが明らかになった。さらにPU.1、Elf-1との結合領域を欠いた変異HoxC13はこれらの蛋白質との機能的相互作用を示さないことから、蛋白質同士の結合はそれぞれの組み合わせによる協調作用、および拮抗作用に必須であると考えられた。 またマウス赤白血病細胞をDMSOにより赤血球方向へ分化誘導した場合、PU.1とHoxC13の遺伝子発現は低下するが、Elf-1の遺伝子発現は上昇することがRT-PCRにより示された。 これらのことから、Etsファミリー転写因子とホメオドメイン蛋白質との間には物理的、機能的な相互作用が存在し、その相互作用が血液細胞の分化の制御になんらかの関わりをもつものと推察された。
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