研究課題
基盤研究(C)
本研究では、Translin遺伝子欠損(TSN-KO)マウス末梢血中の白血球数が幼年期に激減していることに着目し、造血幹細胞の自己複製と前駆細胞への振り分けに必要な機構の解析をおこなった。この現象は、末梢血リンパ球の成熟が未分化な状態(B220-,IL-7R+,CD43+)で停止していることに因るものであった。実際、リンパ球前駆細胞に不可欠な転写因子、E2A, EBF, Pax-5のmRNAの末梢血中における発現は低下していた。従って、造血幹細胞や前駆細胞の極めて初期の段階でTranslin遺伝子が深く係わっていることを示唆している。TSN-KOマウスに認められるもう一つの異常は、加齢と共に骨髄の造血能が低下し、生後1年を経過すると骨髄の幼若骨髄系細胞が激減することである。さらに進行すると、骨髄の造血能は廃絶し、脾臓肥大を伴う髄外造血が観察された。この現象を明らかにするため、骨髄系細胞の分化に不可欠なPU.1遺伝子の発現をRT-PCR法で解析したが、活性に変化は認められなかった。しかし、basic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子、E2Aとそれに特異的に結合する蛋白、TAL1の発現が低下していた。E2AとTAL1の複合体形成は、新たなDNA結合ドメインを形成し、骨髄系幹細胞から前駆細胞への振り分けに不可欠な遺伝子の発現を調節することを示唆している。さらに、この時期の骨髄では造血幹細胞(Lin- Sca-1+ c-kit+)が急激に増加していることも明らかとなった。以上の結果は、幼若リンパ系細胞や骨髄系細胞の分化成熟だけでなく、造血幹細胞の自己複製に不可欠な造血微小環境にもTranslin遺伝子が重要な役割を果たしていることを示唆している。
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