研究課題
申請者はcAMP応答エレメント結合蛋白(CREB)に対するアンチセンスオリゴヌクレトチドが正常造血細胞に影響を与えずに白血病細胞を特異的に殺傷することを見出し(Saeki et al. Leukemia 2001)、白血病治療薬としての有効性につき特許を出願した(特開平11-103860)。さらにアンチセンスCREBの標的はcanonical CREB messageではなく、CREB遺伝子に由来する新規なmessageであること、そのmessageはCREB遺伝子のexon 2とintron 4中のAlu elementとがスプライシングを介さない機序により結合していることを明らかにした。しかしこのようなintronとexonの結合したmessageの生成はこれまでの分子生物学の知識では説明できない。そこで当該研究ではこの新規融合型messageの塩基配列を決定するとともに、その生成機構を明らかにすること計画した。平成16年度では新規融合型messageの3'末端の塩基配列を明らかにするために、poly A付加シグナル部位をprimer walking法により決定した。そしてpoly A付加シグナル部位がexon 4の3'末端にあるaataaaであることを確認した。即ち、新規融合型messageとしてexon 1からintron 4中のaataaaまでの塩基配列を決定することができた。平成17年度では新規融合型messageの生成機序にせまるために、CREB遺伝子のexon 1からexon 8までの領域におけるクロマチンの高次構造の解析を行った。具体的にはヒストンH3の9番目のリジン残基のアセチル化およびメチル化の状況をクロマチン免疫沈降法(ChIP assay)により調べた。結果は、アセチル化に関してはexon 1では高アセチル化を認め、exon 2からexon 8までは低アセチル化を認めた。またメチル化に関してはexon 1では低メチル化を、exon 2からexon 6までは高メチル化を示した。但しintron 4中のmessage融合部を含む狭い領域ではメチル化が特異的に低下していた。さらにヒストンアセチル化酵素HDACsの阻害剤であるtricostatin Aを白血病細胞に添加したところ、融合messageの発現が特異的に消失することが分かった。このことから融合型messageの産生においてヒストンのアセチル化およびメチル化に伴うクロマチンの高次構造の変化が深く関係していることが示唆された。
すべて 2006 2005
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