細胞周期はサイクリンとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)により進行し、CDK inhibitor(CDKI)により抑制されている。これらの分子の異常により細胞周期の制御に破綻をきたすと、細胞の異常増殖を引き起こし腫瘍化の原因になると考えられている。我々はCDKIの一種であるp57KIP2遺伝子がDNAメチル化によりリンパ系腫瘍において高頻度に不活化されていることを発見し、当遺伝子の候補癌抑制遺伝子としての可能性と病態への関与を明らかにした。 p57KIP2遺伝子のあるB細胞性細胞株NAMALWAにsiRNAを発現ベクターにて導入した。当細胞株はp57KIP2遺伝子の発現が蛋白質レベルで約90%抑制されていることが分かった。このp57KIP2遺伝子knockdown細胞株を用い細胞増殖について検討したところ、MTT法にてコントロールと比べ有意に細胞増殖速度が速いことが明らかになった。また細胞周期についての検討ではコントロールとS期への移行が早いことが明らかになった。これらの所見はp57KIP2遺伝子が細胞増殖を抑制していることを示唆し、当遺伝子が癌抑制遺伝子としての特徴を持っている事が明らかになった。 p57KIP2遺伝子knockdown細胞株とコントロール細胞株をcDNA micoroarrayを用いmRNAのexpression profileを比較した。p57KIP2遺伝子knockdownにより発現上昇する遺伝子群と発現低下する遺伝子群をそれぞれ同定した。現在これら遺伝子群の機能解析中である。 p57KIP2遺伝子のDNAメチル化の臨床的意義を検討するためB細胞性リンパ腫症例において予後とDNAメチル化有無の相関を解析した。現時点ではp57KIP2遺伝子のDNAメチル化とB細胞性リンパ腫症例の予後との間に有意な相関は見いだせていない。
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