研究概要 |
喘息などのアレルギー性疾患に対する新しい遺伝子免疫療法のツールとして、リバースジェネティクスを駆使し、気道粘膜に特異的に感染し病原性の認められないパラインフルエンザ2型ウイルス(PIV2)に、マウスインターロイキン4(mIL-4)ならびにそのアンタゴニスト(mIL-4a)を挿入したリコンビナントウイルス[rPIV2(mIL-4),rPIV2(mIL-4a)]を作製した。 これらのウイルスは、in vitro(Vero,BHK,LLC-MK2細胞)においては、親株であるrPIV2とほぼ同じ増殖傾向を示し、その感染細胞の培養上清中のmIL-4発現量は、3〜5(μg/ml)と極めて高い値を示した。一方、in vivo(マウス肺)において、rPIV2(mIL-4)は殆ど増殖を示さなかったが、rPIV2(mIL-4a)では、ピーク時のウイルスレプリケションがrPIV2の3倍程度高かった。また、これらのウイルス間で明らかな炎症性の差はなかった。さらにrPIV2(mIL-4a)からのmIL-4a発現により生体内のIL-4の発現が抑制されるとウイルスのレプリケーションが促進し、逆にrPIV2(mIL-4)からのmIL-4発現により生体内のIL-4の発現が増加するとウイルスのレプリケーションが抑制されることから、IL-4によるPIV2レプリケーション抑制が示唆された。 これらの結果をふまえ、OVA誘発喘息モデルマウスを用いて上記のウイルスベクターによる喘息の予防・治療効果について、マウスの肺胞洗浄液中の全細胞数ならびに全蛋白量を指標に検討した。Th1移行性を示すIL-4アンタゴニストを挿入したPIV2ベクターを接種したマウスでは、上記の両指標が他のコントロール群と比較して約50%程度に抑えられており、Th1/Th2バランス是正による新規遺伝子免疫療法としての有用性が示唆された。
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