培養滑膜細胞に対するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の作用とその機序の解析を中心に行い以下の治験を得た。 1.培養滑膜細胞に対するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)の影響を検討した。(1)代表的HDACiであるtrichostatin A(TSA)は細胞増殖抑制作用を有し、さらにアポトーシスを誘導した。他のHDACiでも同様の作用が見られた。(2)TSAはp21^<waf1>を誘導するが、p27^<kip1>やp53は誘導しないことが判明した。p53のアセチル化にも影響しないことからTSAはp21発現抑制を通じて増殖抑制をしていると思われた。(3)TSAは抗FAS抗体によるアポトーシスの誘導に対する感受性を増強することが判明した。アポトーシス増強作用はcaspase依存性であった。TSAはFasやBcl-2の発現には影響しないが、FLIPの発現を低下させることが判明した。(4)TSAはTNF-alfa刺激によるIL-6およびMMP-3誘導を低下させた。 2.TSAの作用機序解明のため、TSAにより誘導、または抑制される遺伝子をcDNAサブトラクション法およびdifferential display法を用いて同定することを試みた。数十種類の候補遺伝子の中からいくつかについて定量PCR法で確認した。これらの遺伝子の培養滑膜細胞に対する作用解明のためベクターを作成した。 3.生体内での作用を確認するため、予備実験で関節炎モデルが発症することを確認した。
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