研究概要 |
TNFファミリーに所属する分子であるAPRILおよびBAFFはII型膜蛋白で、この二分子は高い相同性を有している。これら2分子はBCMA, TACIという2つのレセプターを共有、またBAFFは固有のレセプターとしてBR3を有し、これらを介してB細胞の分化や増殖に関与していると考えられている。さらにSLEのモデルマウスであるNZBWF1に可溶型蛋白TACI-Igを投与することで病態が著明に改善することが報告された。以上より本研究ではAPRILおよびBAFFが自己免疫疾患の発症に関与しているかどうかを検討することを研究目的とした。まずAPRILの遺伝子構造を決定し、G67R、N96Sという2つの遺伝子多型を同定した。SLE148名、健常人146名を対象にアレル頻度を比較したところ67Gのアレル頻度がSLEで有意に上昇していた(p=0.0302)。つぎに可溶型APRIL、BAFFをELISAにより測定する系を確立し、可溶型APRILの血中濃度がSLE患者(84.1±106.1ng/ml, mean±S.D.)では健常人(16.0±25.6ng/ml)に比較し、有意(p=0.0004)に上昇していることを初めて明らかにした。またBILAG indexを用いた解析では血清APRIL濃度はSLE患者の関節症状と関連していた(P=0.0151)。本研究によりSLEにおける新たな疾患感受性遺伝子としてAPRIL遺伝子が同定された。SLE患者において血清APRILおよびBAFFが上昇していることを明らかにし、B細胞刺激を介してSLEの病態形成に関与している可能性が示唆された。APRILおよびBAFFが今後SLEの特異的治療を行う際のターゲットになる可能性が示された。
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