研究課題
基盤研究(C)
H.pylori感染によって引き起こされるITP(特発性血小板減少性紫斑病)発症機序は不明であるが、除菌有効ITPではPA IgGや抗血小板抗体の低下が認められる事から、H.pylori感染が抗血小板自己抗体の産生を引き起こすことは間違いないと考えられている。しかしながらH.pylori感染者の全てにITPが引き起こされる訳ではない事実より、宿主側にその要因があると推測できる為、我々の「H.pylori感染者ではEBV蛋白が検出できる」という基礎データーを元に、H.pylori感染とEBVとの関連でITPの発症機序を検討する事とした。EBVはB細胞感染ウイルスであり、その異常によって自己抗体を産生し、ITPを引き起こす可能性が示唆されたからである。まずH.pylori感染者と非感染者における胃の組織生検標本において、EBVの感染を免疫染色で検討を行ったところ、非感染者に比べて約8倍ものEBVの蛋白が検出された。次にin vitroにおいてEBV感染細胞にH.pyloriを接着させたところ、EBVが潜伏感染から活性化サイクルに移行する際に認められる初期蛋白EA-Dが顕著に増加する事を、FACS及びWestern blotにて証明した。これらの結果より、H.pylori感染によってEBV感染B細胞が影響を受けて、その異常を誘導する事が示唆された。この事実はITPだけではなくH.pylori関連MALTOMAの病態解明にも繋がるか可能性を示唆する。ここ数年、BLC(B-lymphocyte chemoattractant)の異所性発現が自己免疫疾患を誘導するという報告がなされており、BLCはそもそもBLR-1(Burkitt lymphoma receptor 1)として報告されている事から、自己免疫疾患及びEBV関連分子であると想定できる。またBLCはTNF-αに依存して発現するが、2004年にH.pylori菌体内TNF-α誘導蛋白(Tip)が報告された。今回我々はそのTipを用いてTNF-αの産生を各種の細胞を用いて検討を行ったところ、樹状細胞において高いレベルで産生される事を見出した。また同時にIL-6の産生も促すことより、B細胞の分化を誘導していると考えられた。さらに胃炎患者の胃の組織標本において、胃腺部位にBLCが発現することを確認した。以上よりH.pylori感染により局所のBLCがB細胞を誘導し、樹状細胞からのTNF-α・IL-6によりB細胞が分化している可能性が示唆された。
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