研究概要 |
本研究では関節リウマチをはじめとしたリウマチ性疾患におけるheme oxygenase-1(HO-1)の病態における意義を解析し、以下の成果をあげた。 1)血清中HO-1蛋白をELISA法により測定した結果、高フェリチン血症をきたす成人スティル病、血球貪食症候群の活動期に異常高値を認め、病勢と一致して変動した。これらの疾患の患者では、HO-1値はフェリチンと相関していたが、頻回輸血や肝疾患により高フェリチン血症を呈する患者においては、血清HO-1値の異常を認めなかった。また、血清HO-1高値を示す患者において、末梢血単核細胞のHO-1 mRNAの発現をreal time PCR法により定量的に解析したが、高発現を示す患者は一部にすぎず、多くは健常者と差異がなかった(Kirino Y, Takeno M et al, Arthritis Research Therapy,2006)。予備実験の段階であるが、血中HO-1の源は骨髄やリンパ節などの病変部のマクロファージと想定される。 2)関節リウマチ滑膜組織にはHO-1蛋白は豊富に発現していることを見出した。関節リウマチ患者より滑膜細胞株を樹立し、HO-1を遺伝子的に強制発現させると、あるいはヘミンや金剤でHO-1発現を誘導すると、炎症性サイトカイン産生は低下した。逆にsiRNAでHO-1の発現を抑制するとサイトカイン産生は増強した。以上の結果より、HO-1はリウマチ炎症の進展に対し制御的な役割を果たしており、金剤の抗リウマチ効果の一部にはHO-1誘導作用が関与していると考えられた。したがって、HO-1は関節リウマチにおける新しい治療標的として期待される(Kobayashi H, Takeno M, et al.,Arthritis Rheum, in press)。
|