研究概要 |
本研究ではリウマチ性疾患を対象とし、heme oxygenase(HO)-1の病態における役割、治療標的としての有用性、診断マーカーとしての可能性を検討し、以下の成果をあげた。 1)HO-1誘導剤、ヘミンを投与することにより、MRL/lprマウスのループス腎炎の進展が抑制された。ヘミン投与マウスでは血清抗DNA抗体値の低下、IFN-γ産生抑制、腎病変局所のiNOS発現抑制が観察され、ヘミンの薬理効果発現には複数の機序が関与していることが示唆された(Takeda Y, Takeno M, et al. Clin Exp Immunol., 2004)。 2)成人スティル病、血球貪食症候群の疾患活動期にはその高フェリチン血症と相関して血清HO-1の異常高値が観察されるのに対し、頻回輸血や肝疾患患者ではフェリチン高値であってもHO-1は正常を示した。成人スティル病、血球貪食症候群でみられる高サイトカイン血症とは関連なかった(Kirino Y, Takeno M et al, Arthritis Research Therapy,2005)。また、in vitroで単球を炎症性サイトカインで刺激してもHO-1の発現は誘導されない。高HO-1血症患者末梢血単核細胞で、HO-1mRNA発現亢進が確認されるのは一部にすぎず、主たるHO-1の産生源は骨髄やリンパ節などの病変部のマクロファージと想定される。 3)関節リウマチ滑膜組織にはHO-1蛋白は豊富に発現していた。さらに、患者由来滑膜細胞株の炎症性サイトカイン産生はHO-1発現増強により低下し、発現抑制により増加したことから、病変局所のHO-1はリウマチ炎症の進展に対し制御的な役割を果たしていると考えられる。抗リウマチ薬の中ではauranofinにHO-1誘導作用があり、その薬理効果発現に関与していると考えられた。以上より、HO-1は関節リウマチにおける新しい治療標的として期待できる(Kobayashi H, Takeno M, et al, Arthritis Rheum,2006)。
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