研究概要 |
【目的】抗Ku抗体は強皮症一多発性筋炎重複症候群患者血清中に特異的に見出された自己抗体であり,その対応抗原(Ku蛋白)は2重鎖DNA末端に結合し,転写調節,DNAの修復,複製に関わる.その語,Ku蛋白は2重鎖DNA存在下で種々の複製・転写因子をリン酸化するDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の補助因子であることが報告された.本研究では,1)DNA-PKの構造および機能とアポトーシスとの関連の追究,2)自己抗体産生へのアポトーシスの関与の追究,3)自己抗原エピトープの同定と抗体産生に関与するT細胞の抗原認識機構の解明,4)抗DNA-PKcs自己抗体の病因的および臨床的意義を追究することを目的とした.平成16年度は,DNA-PK触媒subunitに対する自己抗体(抗DNA-PKcs抗体)の臨床的意義および免疫学的特異性を追求した. 【方法】膠原病患者920例を対象とし,35Sメチオニン標識HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法により,抗DNA-PKcs抗体および併存自己抗体を検出した. 【結果】免疫沈降法により抗DNA-PKcs抗体陽性の11血清を得た.これら11例の臨床診断は,全身性エリテマトーデス3例,全身性硬化症2例,多発性近炎2例,膠原病重複症候群4例であった.併存自己抗体を検索したところ,抗DNA-PKcs抗体陽性11例のうち7例では抗Ku抗体が陽性で,両者の高率の併存が示された. 【結語】Ku蛋白/DNA-PKcs複合体構成分子に対する自己免疫応答の連関から,生体内においてantigen drivenにより自己抗体産生が誘導される可能性が示唆された.
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