研究概要 |
【目的】抗Ku抗体は強皮症-多発性筋炎重複症候群患者血清中に特異的に見出された自己抗体であり,その対応抗原(Ku蛋白)は2重鎖DNA末端に結合し,転写調節,DNAの修復,複製に関わる.その語,Ku蛋白は2重鎖DNA存在下で種々の複製・転写因子をリン酸化するDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の補助因子であること,DNA-PKの欠損がSCIDマウスの原因であることが報告された.本研究では,1)DNA-PKの構造および機能とアポトーシスとの関連の追究,2)自己抗体産生へのアポトーシスの関与の追究,3)自己抗原エピトープの同定と抗体産生に関与するT細胞の抗原認識機構の解明,4)抗DNA-PK触媒サブユニット(DNA-PKcs)自己抗体の病因的および臨床的意義を追究することを目的とした.平成17年度は,昨年度見出した抗DNA-PKcs抗体と抗Ku抗体を用いて,DNA-PK活性検出法を開発し,自己抗体のDNA-PK活性に及ぼす影響を検討することした. 【方法】1.HeLa細胞より免疫アフィニティーカラムにより精製したKu蛋白とDNA-PKcsを用いて試験管内リン酸化反応を行い,自己抗体がDNA-PK活性へ与える影響を検討した. 2.HeLa細胞より自己抗体が免疫沈降しプロテインAセファロースビーズ上に結合したDNA-PKcsに,精製Ku蛋白とdsDNAを加え,DNA-PKホロ酵素を再構成させ,試験管内リン酸化反応を行った. 【結果】1.自己抗体が免疫沈降したDNA-PKcsはKu蛋白とdsDNA存在下で基質をリン酸化し,DNA-PK活性が検出された. 2.抗Ku抗体はDNA-PK活性を抑制したが,抗DNA-PKcs抗体は抑制しなかった. 【結語】簡便なDNA-PK活性検出法の確立し,抗Ku抗体がDNA-PKの機能を制御することを明らかとした.本研究成果は,SCIDや自己免疫疾患の病因・病態の解明に有用と考えられる.
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