研究概要 |
1.目的 抗Ku抗体は強皮症一多発性筋炎重複症候群患者血清中に特異的に見出された自己抗体であり,その対応抗原(Ku蛋白)は2重鎖DNA末端に結合し,転写調節,DNAの修復,複製に関わる.その語,Ku蛋白は2重鎖DNA存在下で種々の複製・転写因子をリン酸化するDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の補助因子であること,DNA-PKの欠損がSCIDマウスの原因であることが報告された.本研究では,1)DNA-PKの構造および機能とアポトーシスとの関連の追究,2)自己抗体産生へのアポトーシスの関与の追究,3)自己抗原エピトープの同定と,4)抗DNA-PK触媒サブユニット(DNA-PKcs)自己抗体の病因的および臨床的意義の追究を目的とした. 2.方法 (1)膠原病患者920例を対象とし,免疫沈降法により自己抗体を検出した. (2)プロテインAセファロースビーズ上にDNA-PKホロ酵素を再構成させ,試験管内リン酸化反応を行った. (3)Jurkat細胞に抗Fas抗体によりアポトーシスを誘導し,DNA-PKの動態を調べた. 3.結果 (1)抗DNA-PKcs抗体陽性は11血清で,診断は全身性エリテマトーデス3例,全身性硬化症2例,多発性近炎2例,膠原病重複症候群4例であった.11例中7例では抗Ku抗体が陽性で高率に併存した. (2)試験管内でDNA-PK活性が検出された.抗Ku抗体はDNA-PK活性を抑制したが,抗DNA-PKcs抗体は抑制しなかった (3)アポトーシス誘導後,DNA-PKcsがCPP32の標的となり230kDa,160kDaと120kDa蛋白に限定分解され,活性は1低下した.DNA-PKcs上の複数のエピトープと自己抗体反応様式は多様で,p160に主要な抗原決定基が含まれた. 4.結語 抗DNA-PKcs抗体の臨床的意義および免疫学的意義が明らかとなった.
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